今日はバレンタイン・デー。 3世紀ローマで異教徒迫害により殉教した聖人ヴァレンティヌスの記念日。 いや、大事な情報はそこじゃない。大事なのは、ローマの異教徒のお祭りと結びついてだったか、意中の人に贈り物をして 愛を打ち明けたり、相思相愛の男女が贈り物を交換しあったりする日になっているということだ。 恋をするものなら、誰もが心ときめかせるだろうお祭り。 ましてや、愛し愛される相手がいるなら、尚更。 ラビはともすると顔に出そうになる浮ついた気持ちをぐっとこらえながら、静かに自分の部屋を出た。 足取り軽くラビは廊下を進む。 ユウがホームに戻ってきているのは昨日のうちに確認済だ。 決意をこめて、右手に持った紙袋の取っ手をぎゅっと握りしめる。 ・・・ユウからの贈り物は正直期待していない。そりゃあほんのちょぴーっと、ごくごくわずかになら、もしかしたらという期待がなくも、ない。 けれどラビは、その期待に胸躍らせているわけではなかった。 ユウに恋人として贈り物をする。なんて素敵なことだろう。 きっとユウは照れて、照れて照れて照れまくって、それでもきっと受け取ってくれる。 ・・・・・・つき返される可能性もなきにしもあらずなのだが。 ある意味ギャンブルだ。きちんと機嫌その他もろもろの状態を確認してから挑戦しないと、負ける。 ラビはちらりと手に持った紙袋に視線を落とした。中には―― ブーケが入っている。 お菓子が入っている。