ふと身じろいだ瞬間、肘にあたって紙袋が床に転がり落ちた。 中から飛び出してしまった包みをユウに見られて、もう後には引けないと、拾い上げたそれをユウに押し付けた。 「ユウ、俺からのバレンタイン・・・・!」 「俺にか」 「そ、そう」 「・・・・・・」 意外にもあっさり受け取ってくれたユウは、開けていいかと問うてくる。 俺は拍子抜けしながら、あ、うん、とうなづいた。 包みが解かれ、姿を現したのはややいびつな、こげ茶色のクッキー。 「・・・・ココア?」 「・・・・うん。ていうか・・・・ちょっぴしウェルダン?」 「・・・・・・つまりは炭か」 「ごめ・・・・やっぱ市販品に頼ればよかったさ」 うなだれる俺をしばらく見つめていたユウは、おもむろにクッキーをつまんで、口に放った。 「ユ・・・・ッ! だめさ体に悪い!」 「苦ェ」 「やっぱ返すさ! そんなん、とてもあげられな・・・・」 「いい。もらっとく」 苦いぐらいが丁度いい。 言って箱に蓋をしたユウに、俺は辛抱堪らず抱きついた。 「うお・・・・っ」 「ユウ・・・・・・だ、大好きさ――!」 「いい歳して泣くんじゃねェ! ったくしょうがねェな!」 ぶつぶつと続くユウの文句も耳に入らず、俺はぎゅうとユウを抱きしめて、幸せを噛み締めていた。