方舟編1。ユウちゃん視点
比喩でも何でもなく、足もとから崩れ落ちていく世界。 早く行かなくては扉が消えてしまう。 思うのに、体は思うように動かない。 このままここにいたら、自分もあの”無”に呑み込まれて消えてしまうのに。 アイツらが待ってる、のに。 思い浮かぶのがアイツらの顔だけなのが、妙に笑えた。 誰を思い出してたっていいはずなのにな、 だってコレは、最期の時なんかじゃないんだから。 俺はまだ、生きて、生きて、やることがあるのだから。 ――もし俺もここまでなんだとしたら、それこそどうして、 最期に思い浮かぶのがあの人の顔じゃないんだ。 必死そうなモヤシだとか。 むくれたリナリーだとか。 顔に心配だ、って書いてあるくせに、 下手くそに笑ってみせる、アイツの顔だとか。 どうかしてるぜ、まったく。 ・BACK・