「もしさ、一年に一度しか会えないとしたら、ユウは俺のことなんか忘れちゃうんだろうな・・・」 「・・・・・・・・」 「んで、折角天の川を渡れる日なのに、探しても探してもユウは居なくて、俺は一人で待ちぼうけ・・・」 「・・・・・妄想逞しいのは構わねェが、どっか余所でやれ」 「ユウぅぅぅぅぅ」 「ウゼェんだよどっか行きやがれ!!」 縋りついた所を力任せに振り払われて、ラビはしおしおと床にへたり込む。 そのまま”の”の字を書き始める様子に耐えかねて、神田の額に青筋が浮く。 「なんっなんだよテメェは・・・!」 「だってかわいそうなお話さー! 好きな人と一年に一度しか会えないなんて!」 「作り話だろうか! 第一、俺を使って妄想すんじゃねェ!!」 「構ってくれないユウが悪いんさー!」 「うるせェ!! 俺は仕事中なんだよ!!」 久しぶりに教団で顔を合わせたからか、やたらとひっついてくるラビを神田としても邪険にできずに、 まァ事務作業が少し残っているだけだと、部屋に入れてやったのがそもそもの間違いだった。 更に言うなら、七夕の絵本なんて渡してしまったのも。 ちょうど作業のための資料を図書室に探しに行った時、幼い頃読んだこの絵本を棚に見つけて、 懐かしさのあまりついつい一緒に持ってきてしまったのだった。 「・・・・俺はそんなに薄情かよ」 「うん。はた織るのに一生懸命になりすぎて、俺のことなんかケロっと忘れちまってそう」 「・・・・・・・」 ・・・・・バカバカしい。 アホの妄想につきあっていられるかと、神田は机に戻った。 椅子に座り直し、ペンを持った所で、ずしりと肩にかかる重み。 「・・・オイ」 「ごめん、もう邪魔しないさ・・・・これで最後」 「・・・・・・・チ」 「あと、前言撤回」 「あ?」 「やっぱユウは、俺のこと忘れたりなんてしない、よ・・・ね?」 なんで疑問形なんだ。 妙に間の抜けた空気が漂う。 神田はため息をつくと、一切を意識の外に追いやって、目の前の書類に集中することにした。 ・BACK・
七夕の。ラビたん情けなさすぎですみません・・・