手にした煙草の先から、ほろほろと灰が零れ落ちた。
まだ火をつけたばかりのそれを、口元に寄せて、
「桂ァ」
「なんだ芋侍」
「・・・・・テメーはよ」
肺の奥深くまで紫煙を吸って、吐く。
「何で攘夷なんてやってんだ」
今時流行んねーだろ。茶化すように言ってやる。
いつも飄々として見える目の前の男は、怒るでもなく、いつものように不敵な笑みで、腕を組んで、
「ならばお前は、何故江戸の平和など守っている」
「俺が守ってんのは俺の大将だけだ。江戸なんざオマケみてーなもんさ」
「いかん録音を忘れた。今の台詞、ぜひとも市井の者らに聞かせてやりたかったな」
「ふざけてねェで質問に答えろ」
「簡単なことだ」
桂は小馬鹿にしたように鼻をならして、
「俺は俺自身を守っているだけだ。誰より何より、俺自身に従っているだけだ。
お前が近藤に従うように、俺は俺の意志のため、存在理由のため、戦っている」
「・・・・・答えに、なってねーよ」
「フ、やはり芋には理解できんか」
桂はチラリとこちらに視線を寄こして、これ見よがしにため息をついて見せた。
訳のわからないことを言っているのは向こうだというのにこの態度。
土方は小さく舌打ちして、地面に落した煙草を力任せに踏み消した。
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土桂。土方より大人な桂さんが好きです。