「銀時」
名を呼ばれて顔を向ければ、戸口の所に桂が立っていた。
「ヅラか」
「ヅラじゃない桂だ」
「勝手に上がりこんでるんじゃねェよ」
「何度も呼び鈴は押した。 大体、居留守ではないか。
出てこないお前が悪い」
「聞こえなかった」
「わけがないだろう」
ふぅ、とため息をついて、桂は持ってきた包みを台の上に置く。
「新八君とリーダーは?」
「お使い」
「・・・・あまり子供をこき使うなよ」
「かわいい子には旅をさせろってな」
「調子のいいことだ」
呆れる桂を、銀時はソファに座ったまま手を伸ばして引き寄せる。
がくりと体勢を崩しかけたが、手を突っ張って抵抗を見せる桂。
「・・・子供らが帰ってきたらどうする」
「来ねェよ。 重要な客が来るから夜までどっかで遊んでろって言ってある」
「用意のいいことだ・・・・・」
「昼にな」
和菓子屋の前でお前を見かけてよ。
ニヤリと笑う銀時に、桂の頬に朱がさす。
「・・・・お前への土産とは限らんだろう」
「へぇーヅラ君お菓子贈るようなお友達いたんだー」
「じっ・・・・・ぶんで、食べる、とか・・・・・」
頬に、額に。
銀時の唇を受けながら桂はもごもごと言う。
「・・・・というかっ」
「なんだよ」
「俺が来るのがわかっていたならさっさと応対せんか・・・!」
「今してる」
「そういう意味じゃ・・・・・」
台詞は銀時の中に吸い込まれてしまう。
濃厚な口づけに頭の奥が痺れるような感覚を受けながら、結局こうして
うやむやにされてしまうのだと、ほんの少しだけくやしく思った。
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銀桂。日常の風景みたいな。